ストリートファイターII' ターボ:ハイパーファイティング (Street Fighter II' Turbo: Hyper Fighting)
1. ゲーム背景
1.1 世界観設定
1992年、世界格闘大会が再び幕を開ける。ベガ(M. Bison)の敗北後もシャドルーは壊滅せず、ベガ率いる四天王が再び戦場へと舞い戻った。前作『ダッシュ』とは異なり、本作では四天王がCPU専用のボスではなく、プレイヤーが操作可能なキャラクターとして正式に参戦。これにより、かつての悪役を自ら操り、頂点を目指すことが可能となった。格闘の舞台はよりオープンに、そしてより過酷なものへと変貌を遂げた。
加速版の背景は『ストリートファイターII』の核心的な物語を継承している。リュウは「真の格闘の道」を追い求め、ガイルは戦友ナッシュの仇を追い、春麗はシャドルーの犯罪を追う。しかし、加速版で実現した高速なバトルテンポは、単なる技術的なアップグレードにとどまらず、四天王の参戦によって世界格闘界がより激しい争いへと突入したかのような緊迫感を生み出している。
1.2 開発の歴史
『ストリートファイターII' ターボ』の開発は、ある「海賊版」がきっかけだった。1992年初頭、台湾の洪熙企業が『レインボーエディション』という改造版をリリース。空中必殺技、波動拳の連射、追尾弾、対戦中のキャラクター切り替えなど、極めてバランスを無視した機能がアジアのゲームセンターで爆発的な人気を博した。カプコンUSAのデザイン顧問ジェームズ・ゴダードは『Polygon』のインタビューで、この『レインボーエディション』をプレイした際、大阪の本社へ「対抗するために公式のアップデートを出す必要がある」と報告したことを明かしている。
カプコンは1992年12月にこれに応答。本作は『ダッシュ』のCPS-1基板用「アップグレードキット」として発売され、ゲームセンターはROMチップを交換するだけで既存の筐体をターボ版へアップグレードできた。この戦略により、オペレーターのコストを抑えつつ、驚異的なスピードで普及した。プロデューサーの岡本吉起が指揮を執り、西谷亮と安田朗がデザインを担当、音楽は下村陽子と阿部功が手掛けた。開発チームは1年足らずでこの作品を完成させた。本作はCPS-1基板における『ストリートファイターII』シリーズの最終作となり、次作『スーパーストリートファイターII』からはCPS-2プラットフォームへと移行した。
2. キャラクター紹介
本作は全12キャラクターを収録。四天王が初めて全モードで選択可能となった。
| キャラクター | 国籍 | 格闘スタイル | 代表技 |
|---|---|---|---|
| リュウ | 日本 | 波動流暗殺拳 | 波動拳、昇龍拳、竜巻旋風脚(空中版追加) |
| ケン | アメリカ | 波動流暗殺拳 | 波動拳、昇龍拳、竜巻旋風脚(空中版追加) |
| 春麗 | 中国 | 中国拳法 | 百裂脚、気功拳(追加)、空中回旋鶴脚蹴 |
| E.本田 | 日本 | 相撲 | 百裂張り手、スーパー頭突き、大銀杏投げ(追加) |
| ブランカ | ブラジル | 野獣格闘 | エレクトリックサンダー、ローリングアタック、バーチカルローリング(追加) |
| ザンギエフ | ソ連 | プロレス | スクリューパイルドライバー、ダブルラリアット、フライングパワーボム(追加) |
| ガイル | アメリカ | 軍用格闘術 | ソニックブーム、サマーソルトキック |
| ダルシム | インド | ヨガ格闘 | ヨガファイヤー、ヨガテレポート(追加) |
| バルログ | アメリカ | ボクシング | ダッシュストレート、ダッシュアッパー、バッファローヘッドバット |
| ベガ | スペイン | スペイン忍術 | フライングバルセロナアタック、イズナドロップ、バックフリップ |
| サガット | タイ | ムエタイ | タイガーショット、タイガーニー、タイガーアッパーカット |
| M.バイソン | 不明 | サイコパワー格闘 | サイコクラッシャー、ヘッドプレス、ダブルニープレス |
3. 操作方法
3.1 基本操作
本作はCPS-1標準の6ボタンレイアウトを採用:
| 操作 | 機能 | 説明 |
|---|---|---|
| レバー | 移動/防御/しゃがみ | 後ろで防御、下でしゃがみ |
| 弱パンチ | 最速のパンチ | ダメージは低いが連打の起点に |
| 中パンチ | 中威力のパンチ | 攻守のバランスが良い |
| 強パンチ | 最大威力のパンチ | ダメージ大だが隙も大きい |
| 弱キック | 最速のキック | しゃがみ牽制に多用 |
| 中キック | 中威力のキック | キャラにより特殊判定あり |
| 強キック | 最大威力のキック | ダウンを奪いやすい |
共通操作:ダッシュ(前2回)、バックステップ(後ろ2回)、投げ(密着時に方向キー+中/強パンチ)、受け身(空中ダウン時に攻撃ボタンで硬直軽減)。
3.2 ゲームスピードシステム
本作の核心は「ターボスピードシステム」。開始前に4段階の速度を選択可能:
| スピード | 星数 | 効果 |
|---|---|---|
| ノーマル | 0 | 『ダッシュ』と同じ、初心者向け |
| ターボ1 | 1 | 移動と技の発生がわずかに高速化 |
| ターボ2 | 2 | コンボの受付時間がタイトに |
| ハイパー | 3 | 極めて高い反応速度と正確な入力が必要 |
速度が上がると必殺技の入力受付ウィンドウも変化し、星3では昇龍拳の入力猶予が大幅に短縮される。SNES版では裏技でさらに高速な設定が可能。競技大会では主に星2か星3が使用される。
4. 攻略の流れとボス攻略
本作は「12人勝ち抜き」モードを採用。11人の対戦相手を倒すと四天王との連戦へ。ボスキャラ使用時は最終戦がミラーマッチ等に変化する。
| ステージ | 相手 | 攻略のポイント |
|---|---|---|
| 1-4 | 通常キャラ | 追加必殺技でプレッシャーをかける |
| 5-8 | 中堅キャラ | 空中竜巻やヨガテレポートに注意 |
| 9-11 | 強豪キャラ | AIの攻撃性が高いため、防御と確反を徹底 |
| 12 | バルログ | ダッシュパンチをしゃがみガードして反撃 |
| 13 | ベガ | 壁登りは昇龍拳で迎撃、飛び込みを予測 |
| 14 | サガット | タイガーショットを上下で捌き、隙に飛び込み |
| 最終 | M.バイソン | サイコクラッシャー後の大きな隙を狙う |
5. テクニックと上級攻略
5.1 基本生存術
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追加必殺技の活用:リュウ・ケンの空中竜巻は軌道を変えて相手を翻弄できる。春麗の気功拳は低速弾として百裂脚と組み合わせることで遠近両面で圧力をかけられる。
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速度差でリズムを崩す:星3スピードでは、ダッシュで近づいて急停止し、相手の技を誘ってから反撃する「シミー」の原型となる戦術が有効。
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ボス対策:バルログは対空が弱いためジャンプ攻撃で圧倒。ベガは壁登り中に攻撃。サガットは体が大きいため、密着投げやめくり攻撃が非常に有効。
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守備は攻撃に勝る:CPUの攻撃性が高いため、闇雲に攻めず、ガードして隙を待つのがクリアの基本。
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ダルシムのヨガテレポート:→↓↘+パンチ3つ/キック3つで前、←↓↙+パンチ3つ/キック3つで後ろへ移動。飛び道具回避や脱出に必須。
6. 豆知識とアーケード伝説
「レインボー」が産んだ公式版:海賊版が公式を動かした稀有な例。カプコンは海賊版の「スピードアップ」「空中必殺技」というアイデアを公式に取り入れた。
アップグレードキット戦略:キット価格は約300〜400ドル。高価だが、導入後のインカムが平均30%以上向上したため、多くのゲーセンが導入した。
SNES版の偉業:16ビットハードながら、樽割りボーナスステージの復活や国名アナウンス、家庭用限定のエンディングイラストを追加。世界累計410万本を売り上げ、当時の格闘ゲームとして最大のヒットを記録した。
競技シーンの立役者:『ストII』を競技として高めた決定版。初期のEVOでもメイン種目として君臨し、『スーパーストリートファイターII』登場後も「CPS-1のターボこそが最も純粋なストII」と語るプレイヤーは多い。






